多剤併用が課題な昨今のお薬の事情の中で、
お薬の飲み合わせや、薬効の重複の確認で見逃されやすいお薬に、「胃薬」があります。
胃酸関連疾患治療薬は、大きく分けて、次の2つに分けることが出来ます。
①攻撃因子抑制薬
②防御因子増強薬
このページでは、①攻撃因子抑制薬の特徴の比較を行なっていきます。
他にもお薬を使っているんだけど、この胃薬は飲んでも大丈夫?
お薬の飲む錠数・回数を減らしたいんだけど、なにか他の候補とかってある?
こんな質問が来た時などに、ささっと確認する時に、本ページをご活用頂けたらと思います。
コンテンツ
攻撃因子抑制薬の比較【PPIとH2受容体拮抗薬】
攻撃因子抑制薬の主流は、
❶H2受容体拮抗薬(H2 Receptor Antagonist : H2RA)
❷プロトンポンプ阻害薬(Proton pump inhibitor : PPI) の2つがあります。
H2RAは、ヒスタミンH2受容体に拮抗することで酸分泌を抑制し、PPIに次ぐ強さがあり、
日中よりも夜間の酸分泌を強く抑制します。
PPIは、胃壁細胞のH+分泌の最終段階であるプロトンポンプ(H+-ATPase)を、
特異的に阻害し、酸分泌を強力に抑制します。
一般に、第一選択はPPIが選ばられることが多いですが、
胃潰瘍・十二指腸潰瘍では投与日数制限があることや、代謝酵素の関わる飲み合わせなどの理由で、H2RAが選択されるも多いです。
一方、H2RAの多くが腎排泄型の薬剤のため、現病歴・年齢など、注意を要するケースもあります。
PPI・H2RAによる胃内pHの変化
健常人の胃内pHは、下記のように推移すると言われています。
- 食事摂取時:pH4前後
- 食間:pH2前後
- 夜間:pH3前後
日中の胃酸分泌には、ヒスタミンの関与が少ないため、H2RAの日中の効果軽度と考えられていますが、
1日1回・2回の用法に関わらず夜間pHは、6前後まで上昇させます。
PPIは、夜間にもH2RAと同等の効果を発揮しますが、
日中も胃内pHを2前後上昇させるため、終日pH4以上が保たれます。
上記を踏まえると、
PPIを服用している患者では、pH4以上で溶解度や溶出性が著しく低下する薬剤との相互作用は、
仮に服用時点をあけたとしても回避出来ないと考えられます。
- アタザナビル(レイアタッツ)
- リルピビリン(エジュラント)
- イトラコナゾール(イトリゾール)
- ダサチニブ(スプリセル)
- リオシグアト(アデムパス)
- セフポドキシム(バナン)
- ボスチニブ(ボシュリフ)
- パゾパニブ(ヴォトリエント)
- ゲフェニチブ(イレッサ)
- ニロチニブ(タシグナ)
- エルロチニブ(タルセバ)
- プルリフロキサシン(スオード)
- レボドパ製剤(ドパストン)
なぜPPIには投与期間の制限があるのか?
PPIには、疾患によって、長期での服用を制限する縛りがあります。
これは、強力な制酸剤であるPPIの、長期にわたる使用で胃内の細菌叢や栄養の消化吸収に大きな影響を与えるためと考えられています。
具体的には、
・鉄欠乏貧血
・ビタミン欠乏
・骨折リスクの上昇
などのリスクが考えられています。
H2受容体拮抗薬【表あり】
■剤形
【OD錠】ファモチジン ・ ラフチジンには、OD錠があります。
【散剤・顆粒】シメチジン ・ ファモチジン ・ ロキサチジンには、散剤・顆粒の剤形があります。
■用法
【1日4回】シメチジンには、1日4回の用法が添付文書に記載があります。
■代謝排泄
【肝代謝】ラフチジンは、主として肝代謝です。
【肝代謝】シメチジン ・ ラニチジンは、主として腎排泄ですが、CYP2D6 3A4の阻害作用に注意が必要です。
■その他の特徴
【胃運動改善】ニザチジンには、胃運動改善機能があるとされています。
【防御因子増強】ラフチジンには、防御因子増強作用が認められています。
日中の胃酸分泌には、ヒスタミンの関与が少ないため、H2RAの日中の効果軽度と考えられていることを前述しましたが、ラフチジンは、日中にも効果があることが考えられています。
これは、ラフチジンが、カプサイシン受容体感受性知覚神経を刺激することで、胃酸分泌促進作用をもつガストリン分泌を抑制するためです。
プロトンポンプ阻害薬【表あり】
■剤形
【OD錠】ランソプラゾールには、OD錠があります。
【散剤・顆粒】ネキシウムには、懸濁用顆粒分包の剤形があります。
■規格
【規格】ラベプラゾールは、規格が細かくあります。
■用法
【用法】ラベプラゾールには、1日2回の用法が添付文書に記載があります。
■代謝排泄
【CYP】ラベプラゾールは、主とした代謝が、CYPを介したものではありません。
■特徴
【作用発現】ボノプラザンは、酸による活性化を必要としないため、作用発現が速やかです。