コンタクトを装用している方が、目薬を使用するときに、気にしなければいけないポイントで、目薬が含有する防腐剤が挙げられます。
このページでは、
点眼液と防腐剤
コンタクトレンズと防腐剤の関係と対策
について見ていきたいと思います。
上記以外の眼科用剤のリスト(外部リンク)
品目 一般名 添加物 p H などの比較が行えます。(H30.3.5まで)
コンテンツ
点眼液と防腐剤
一般に点眼液は、容器の中の液がなくなるまで反復で使用されることが多く、細菌による二次汚染が懸念され、薬品自体が抗菌性を有する場合を除き、点眼液に防腐剤を加えることが多くあります。
目薬の成分の大半は、水ですが、開封後は時間が経つと、細菌が増殖したり、腐敗が起こったりと品質が劣化します。
この劣化を防ぐために、防腐剤が添加されますが、人体への影響を考え、防腐剤の使用基準は厳しく設定されています。
用法・用量をまもり、しっかりと使用すれば問題はありませんが、
防腐剤の濃さと、接触時間に関連し、角膜を傷つけることがあります。
コンタクトレンズと防腐剤
コンタクトレンズ
一般にソフトコンタクトレンズや、酸素透過性ハードコンタクトレンズは、多孔性であるため、薬剤や防腐剤が、吸着されやすい構造です。
吸着されたまま、これらのコンタクトレンズを使用すると、角膜に薬剤は防腐剤が長時間接触することで、目に刺激を与えたり、レンズの性状に影響を与えることがあります。
コンタクトレンズと防腐剤
基本的には、医師が治療期間中のコンタクトレンズの装用を許可した場合は、ハードコンタクトの場合、装用したまま点眼しても問題ありません。
ソフトコンタクトレンズで、吸水性が高い場合には、つけたままでの点眼は避けたほうが良いでしょう。
(使い切りタイプであれば、使用する薬剤の種類によっては、装用したままで点眼をしても良いとする医師もいます。)
コンタクトを外して点眼するときには、15分程度あけて再度コンタクトをつけるようにして下さい。
※点眼液の液性により前後あり。(ゲル基剤点眼液は、30-60分が経ってから)
コンタクトレンズの種類(Alcon 外部リンク)
- チモプトールXE点眼液0.25% (緑内障)
- チモプトールXE点眼液0.5% (緑内障)
- リズモンTG点眼液0.25% (緑内障)
- リズモンTG点眼液0.5% (緑内障)
- オフロキシンゲル化点眼液0.3% (抗菌剤)
主な防腐剤と、防腐剤を添加しない工夫
主な防腐剤
主な防腐剤を下記に挙げます。
- 塩化ベンザルコニウム
- クロロブタノール
- パラベン類
- ソルビン酸カリウム など
塩化ベンザルコニウム
塩化ベンザルコニウム は、逆性石けんと知られており、医療関係はもとより、家庭や工場の衛生に関連した洗浄・殺菌・消毒剤として使用されてきました。
逆性石鹸と石鹸の関係はシャンプーとリンス!
(RELIVERS 外部リンク)
このベンザルコニウムは、細胞膜のタンパク質を変性させることで殺菌作用を持ち、比較的毒性が低く、広い抗菌スペクトルを持つため販売されている目薬の多くに使用されています。
健康な角膜に対し、適切な使い方をするのであれば、防腐剤として使用されるベンザルコニウムの量では問題を起こしません。
しかし、目薬の使用者が、角膜の弱っている患者や複数の目薬を使用している患者の場合、ベンザルコニウムの持つ細菌の細胞膜への作用が、ヒトの角膜の細胞膜に作用しタンパク質を変性させてしまい、その結果、角膜上皮障害を引き起こします。
緑内障患者さまなど、長期の連用を必要とするケースで、角膜上皮障害の頻度が多いようです。
眼科さんからは、「眼のキズ」と説明されることのある角膜上皮障害ですが、この治療に使われる目薬にも、ベンザルコニウムが含まれることが多くあります。
(ソフトコンタクトレンズの保存液に含まれる塩化ベンザルコニウムで、アレルギー性結膜炎が生じたという報告もあります。)
塩化ベンザルコニウム以外の防腐剤
塩化ベンザルコニウムの他の防腐剤では、
パラオキシ安息香酸メチルやパラオキシ安息香酸プロピルなどのパラベン類系の薬剤やクロロブタノールが使用されることがありますが、塩化ベンザルコニウムに比較し、抗菌力が弱いというデメリットがあります。
したがって、点眼液を設計する際に、塩化ベンザルコニウムを使用した際に、沈殿が生じる場合に、これらのベンザルコニウム以外の薬剤を使用することが一般的です。
(塩化ベンザルコニウムとそれ以外の防腐剤が添加された点眼液を併用するときには、
配合変化を防ぐために、5分以上の間隔あけるようにしてください。)
防腐剤無添加
点眼薬には、防腐剤が全く入っていない目薬もあります。
ベンザルコニウムによる副作用が生じたときには、このような目薬を使用する必要がありますが、防腐剤が入っていない目薬は、細菌で汚染されてしまうリスクがあります。
例えば、市販のソフトサンティアという目薬では、開封後約10日間以上すぎた場合は使用しないこという但し書きがあります。
ソフトサンティア(Santen 外部リンク)
その他容器を工夫することで、防腐剤を添加せずに、汚染のリスクを軽減している製剤もあります。
PF点眼 UD点眼なども最近に汚染されにくいというメリットのある工夫がされている目薬もあります。
UD点眼
ユニットドーズ(UD)点眼液とは、1回使い切りの点眼剤のことです。
- 長期投与に対する安全性が高い
- ソフトコンタクトレンズ装用者でも点眼出来る。
※コンタクトに(有効)成分が吸着することがある点に注意。
- コストが高いこと
- 容器に成分が吸着しない薬剤のみしか使えない。
PF点眼
PF点眼液とは、塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤を含まないPFデラミ容器を用いた点眼液のことです。
PFデラミ容器とは、preservative Free (防腐剤無添加)・Delamination(薄い層に剥離すること)の意味で、先端に0.22μmメンブランフィルターを組み込み、内袋と外層の2層にて微生物などの混入を防いでいます。
- 長期投与に対する安全性が高い
- UDタイプに比べて安全性が同等でコストが安い
- ソフトコンタクトレンズ装用者でも点眼出来る。
- 握力の弱い高齢者などで、開栓操作が難しい。
∟開け方が不十分であると、インナープラグが半開きになり、
薬液が出てこない。
∟初めの1滴が出てくるまでに時間が通常の点眼液よりもかかる。
ベンザルコニウムを使わない方が良いのか?
ベンザルコニウムを使用していない薬剤の注意点は?
最近の目薬では、容器の工夫以外でも、ベンザルコニウム以外の防腐剤を添加した目薬や、ベンザルコニウム以外の防腐剤を使用した目薬も増えてきています。
ベンザルコニウム以外の防腐剤は、殺菌効果は低いものの、角膜障害も少ないということが多いです。
ベンザルコニウムの濃度を低くしたり、別の防腐剤を使用することで、角膜障害を少なくするというメリットはあるものの、殺菌力の低下は避けられず、1ヶ月使用した目薬には、高確率で細菌が見つかります。
塩化ベンザルコニウムは、グラム陽性菌には強い抗菌力を示すものの、グラム陰性菌には、弱い抗菌力しか発揮できないという報告があります。
しかし、低用量(6.25μg/ml)の塩化ベンザルコニウムで、点眼液の汚染原因で最も高い頻度で検出される黄色ブドウ球菌を抑制し、国内で市販の点眼液に汎用される50μg/mlで、十分にグラム陽性菌による汚染を抑制できます。
日本で市販されている医療用の点眼液の塩化ベンザルコニウムの含有量は、25-200μg/ml で、
100μg/ml未満の医薬品が50%以上です。
一方、アメリカで、市販されている医療用の点眼液の塩化ベンザルコニウムの含有量は、50-200μg/ml で、
100μg/ml未満の医薬品が20%程度です。
日本に比べ、アメリカでは、塩化ベンザルコニウムが高い割合で添加されていることがわかります。
皮膚・粘膜刺激が少なく比較的安全とされるベンザルコニウムにおいても、調剤指針が指示している最高有効濃度の100μg/mlで、汚染を抑制できないグラム陰性菌のために、塩化ベンザルコニウムの濃度をあげることは、臨床上有益ではないとされることが多い。
(グラム陰性菌を抑制するためには、200μg/ml以上を添加する必要があると考えられています。)
グラム陰性菌に対しての対策は、上記のPF点眼やUD点眼を使用することの他、
点眼液を汚染する汚染菌の多くが、周囲環境や皮膚などの常在菌であると考えられることから、点眼前の手指の洗浄が最も大切です。
また、開封後1ヶ月経過した目薬は、残量があったとしても破棄する必要があると言えます。
参考)ベンザルコニウムを含まないアレジオン点眼液
人気のアレジオン点眼液
日経メディカルの抗アレルギー点眼薬の第3回調査では、処方頻度の高い薬剤のアンケート調査を行っていますが、
防腐剤として塩化ベンザルコニウムを含有しないアレジオン点眼液が、第2位にランクインしています。
- しっかりとした効き目
- コンタクトレンズ装用者でも使いやすい
- しみない
- 薬剤費が高い
アレジオンLX点眼液
2019年より、アレジオンLX点眼液0.1%が、処方可能となりました。
従来のアレジオン点眼液が、0.05%だったので、濃度が2倍になり、その結果アレルギー作用の持続時間が2倍になっています。(1日4回→1日2回)
もちろん、塩化ベンザルコニウムを含まないため、コンタクトレンズの上からでも点眼可能です。
最後に
コンタクトレンズを外し、点眼後に間隔をもって再装用する方法も紹介しましたが、当サイトでは、塩化ベンザルコニウムを含有する薬剤を使うときには、基本的には、コンタクトレンズを装着時の点眼はお勧めしません。
これは、着脱を繰り返す方が、角膜に良くない場合があるためです。
医師・薬剤師と相談し、コンタクトレンズとも併用可能な薬剤があるかどうかなどを検討してから目薬を使うようにしましょう。