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【薬を知る】ラコール®NF配合経腸用半固形剤【インタビューフォーム】

このページでは、【エンシュア・リキッド】のインタビューフォームをもとに、重要項目の整理をしていきます。

これらの情報を活用する際には、必ず元の文献を確認してください。

【出典】医薬品インタビューフォーム ラコール®NF配合経腸用半固形剤 改訂第4版

販売名

和名

ラコール®NF配合経腸用半固形剤

洋名

RACOL®-NF Semi Solid for Enteral Use

名前の由来

Rapid-Control New Formula
速やかな栄養管理ができる経腸栄養剤で、フィトナジオン(ビタミンK1)量を減量した新しい組成であることによる。

概要

開発の経緯

近年、液状の経腸栄養剤に添加物を加え半固形状に調製した経腸栄養剤を胃瘻カテーテルから投与する方法が行われている。

半固形状の経腸栄養剤を投与することで、胃が本来有する貯留及び排出という生理的な機能を発揮することが期待できる。その結果、液状の経腸栄養剤で認められる誤嚥性肺炎や下痢を予防できると考えられている。

また、液状の経腸栄養剤と比較し、短時間での投与が可能であるため、患者の拘束時間を短縮し、リハビリテーション等の時間を確保することができる。

しかし、現状では、半固形状の経腸栄養剤は市販されておらず、組成・性状において一定の品質が保たれた製剤の開発が求められていた。

「ラコール®NF配合経腸用半固形剤」(以下、「本剤」)は現状の問題点の解決と医療関係者のニーズを踏まえ、開発された製剤である。

本剤は、有効性・安全性が確認され、広く使用されている「ラコール®NF配合経腸用液」に添加物を加え、剤形を半固形剤にした製剤であり、2014年3月に製造販売承認を取得した。

特性と有用性

  1. 本邦初の半固形剤で、1 kcal/gの経腸栄養剤である。
  2. 摂取エネルギー当たりの有効成分及び含量は、ラコールNF配合経腸用液と同一である。
  3. 人工胃液中においても半固形状が保持される。
  4. 剤形が液剤である経腸栄養剤と比べ、投与にかかる時間を短縮することが可能である。

効能と効果

一般に、手術後患者の栄養保持に用いることができるが、特に長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給に使用する。

≪効能又は効果に関連する使用上の注意≫
経口食により十分な栄養摂取が可能となった場合には、速やかに経口食にきりかえること。

用法・用量

通常、成人標準量として1日1,200~2,000 g(1,200~2,000 kcal)を胃瘻より胃内に1日数回に分けて投与する。

投与時間は100 g当たり2~3分(300 g当たり6~9分)とし、1回の最大投与量は600 gとする。

また、初めて投与する場合は、投与後によく観察を行い臨床症状に注意しながら増量して数日で標準量に達するようにする。

なお、年齢、体重、症状により投与量、投与時間を適宜増減する。

≪用法及び用量に関連する使用上の注意≫
本剤は、経腸栄養剤であるため、静脈内へは投与しないこと。

用法・用量の解説

用法・用量は、臨床第Ⅲ相比較試験6)における投与状況並びにラコールNF配合経腸用液の用法・用量を踏まえて設定した。

投与時間については、臨床第Ⅲ相比較試験において本剤の維持期の100kcal当たりの投与時間が2.43±0.42分(平均値±標準偏差)であり、ダンピング症候群及び検査所見の異常が認められなかったことから、「100g当たり2~3分」と設定した。

また、1回当たりの最大投与量については、臨床第Ⅲ相比較試験で600gと設定したこと、胃の生理機能、健康成人の食事摂取量及び摂取の所要時間に関する公表論文の記載、並びに半固形化した経腸栄養剤の投与経験からは、1回当たり600gを投与することで問題が起こる可能性はほとんどないと考えられることから設定した。

≪用法及び用量に関連する使用上の注意≫
本剤は、誤って静脈内に投与してしまうと血管が詰まるおそれがある。
万が一誤って投与してしまった場合には、細胞外液補充液の大量投与と透析によってできるだけ洗い流したり、塞栓予防のため、抗血液凝固療法の禁忌疾患がないことを確認し、ヘパリンを投与するといった処置を行う。

安全性

禁忌

  1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

    (解説)過去に本剤又は本剤に配合された成分の投与で過敏症を起こした経験のある患者は、本剤の投与により、ショック、アナフィラキシーなどを発症するおそれがある。
  2. 牛乳たん白アレルギーを有する患者
    [本剤は牛乳由来のカゼインが含まれているため、ショック、アナフィラキシーを引き起こすことがある。]

    解説)牛乳たん白を含む経腸栄養剤を投与された患者に、アナフィラキシーショックを起こした例が報告されている。本剤は牛乳由来のカゼインを含んでいる。
  3. 胃の機能が残存していない患者[本剤の投与方法は、胃の貯留能、運動機能を利用する必要がある。]

    (解説)本剤の投与方法は、胃の貯留能、運動機能を利用するため、胃の機能が残存している必要がある。
  4. イレウスのある患者[消化管の通過障害がある。]

    (解説)イレウスのある患者では、消化管の通過障害があるため、症状が悪化するおそれがある。
  5. 腸管の機能が残存していない患者[水、電解質、栄養素などが吸収されない。]

    (解説) 腸管の機能が残存していない患者では、投与された水、電解質、栄養素などが吸収されずにそのまま排泄される。
  6. 高度の肝・腎障害のある患者[肝性昏睡、高窒素血症などを起こすおそれがある。]

    (解説)高度の肝障害時にはたん白代謝が十分に行われない。場合によっては昏睡を誘発するおそれがある。 また、高度の腎障害時には血中に尿素などが滞留するが、本剤の窒素源の投与により、この傾向が増大するおそれがある。
  7. 重症糖尿病などの糖代謝異常のある患者[高血糖、高ケトン血症などを起こすおそれがある。]

    (解説) 重症糖尿病など、糖代謝異常が高度に亢進している場合、糖質を含む本剤の投与により、高血糖、高ケトン血症などを引き起こすおそれがある。
  8. 先天性アミノ酸代謝異常の患者[アシドーシス、嘔吐、意識障害などのアミノ酸代謝異常の症状が発現するおそれがある。]

    (解説)アミノ酸代謝異常のある患者に、栄養学的にバランスのよい製剤を投与しても、十分に利用されないだけでなく、血中のアミノ酸インバランスなどから、副作用を生じるおそれがある。

慎重投与

  1. 短腸症候群の患者[下痢の増悪をきたすおそれがある。]

    (解説)腸管大量切除などで、残存小腸が 50~70cm 以下になると、術後しばらく激しい水様性下痢に象徴されるような腸管機能不全が続く。

    このような病態において高カロリー輸液のみで長期間管理すると消化管粘膜は次第に萎縮するため、経腸栄養が必要と考えらる。

    しかしながら、短腸症候群の患者では、腸管大量切除などにより吸収面積が減少し、腸管内にある消化吸収されない栄養素により浸透圧性の下痢を起こすことがある。

    また、回腸末端が大量に切除されている場合は胆汁酸の吸収障害が惹起され、脂肪便による下痢を起こすことがある。

    そのため、投与した栄養剤が有効に利用されないだけでなく、脱水など患者の状態を悪化させるおそれもある。

    したがって、短腸症候群の患者では、状態をみながら少量から投与を開始し、投与量を徐々に増やすなどの注意が必要である。
  2. 急性膵炎の患者[膵炎が増悪するおそれがある。]

    (解説)本剤投与により膵液分泌を刺激し、病態を悪化させるおそれがある。
  3. 水分の補給に注意を要する下記患者
    [下記の患者では水分バランスを失いやすい。]

    1)意識不明の患者
    2)口渇を訴えることのできない患者
    3)高熱を伴う患者
    4)重篤な下痢など著しい脱水症状の患者

    (解説)昏睡状態の患者、意識不明の患者及び口渇を訴えることのできない患者は、水分量が不足しても気付かない可能性があり、また、高熱を伴う患者は不感蒸泄と発汗によって、脱水状態、電解質異常に陥る可能性がある。

基本的な注意

  1. 本剤を術後に投与する場合、胃、腸管の運動機能が回復し、水分の摂取が可能になったことを確認すること。

    (解説)
    術後においては、消化管の運動機能が低下していることが知られており、消化吸収が正常に行われない可能性がある。したがって、術後の投与については、腸管の運動機能の回復を確認する必要がある。
  2. 本剤の臨床試験における13日以上の効果は確認していない。

    (解説)
    開発における臨床試験の症例の最長投与期間が12日間であり、それ以上の長期にわたる試験は実施されていない。
  3. ビタミン、電解質及び微量元素の不足を生じる可能性があるので、必要に応じて補給すること。類薬の長期投与中にセレン欠乏症(心機能の低下、爪白色変化、筋力低下等)があらわれたとの報告がある。

    (解説)
    本剤は、長期にわたり、経口的食事摂取が困難な患者に投与される場合が多く、また、類薬の長期投与中にセレン欠乏症があらわれたとの報告もあるので、ビタミン、電解質及び微量元素を補給するなどの注意が必要である。

併用注意

ワルファリンの作用が減弱することがある。


(解説)
一般にフィトナジオン(ビタミンK1)は、ワルファリンの作用に拮抗し、その作用を減弱することがある。本剤はフィトナジオンを18.75μg/300 g含有するため併用注意とした。

副作用

承認時までの調査において
第III相比較試験(検証的試験)の安全性評価対象56例のうち、副作用発現例数は18例(32.1%)、副作用発現件数は27件であった。

その内訳は、
消化器系の副作用が
下痢10例(17.9%)
腹部膨満感1例(1.8%)
便秘1例(1.8%)
悪心1例(1.8%)であり、

その他の副作用が
ALT(GPT)増加3例(5.4%)
AST(GOT)増加2例(3.6%)
血中カリウム増加2例(3.6%)
血中ナトリウム減少2例(3.6%)
白血球数増加2例(3.6%)
低ナトリウム血症1例(1.8%)
誤嚥性肺炎1例(1.8%)
血中クロール減少1例(1.8%)であった

(承認時:2014年)。

重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー(頻度不明)があらわれることがある。 

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