このページでは、【マイスリー錠】のインタビューフォームをもとに、重要項目の整理をしていきます。
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【出典】医薬品インタビューフォーム マイスリー錠 改訂第31版
コンテンツ
販売名
和名
マイスリー錠 5mg 10mg
洋名
Myslee Tablets 5mg・10mg
名前の由来
My SLEEP の 太文字をとってMyslee と命名した。
一般名
ゾルピデム酒石酸塩
概要
開発の経緯
中枢神経系には、ベンゾジアゼピン(以下、BZDと略す)に高い親和性を示す部位が存在し、BZD受容体と命名された。
しかし、その後の研究でBZD受容体には、BZD以外の構造を持つ化合物の中にも高い親和性を示すものもあることが判明したため、“BZD”と化学構造で規定する名称は好ましくないとして、1988年LangerandArbillaは、オメガ(ω)受容体に改称することを提唱した。
中枢のω受容体には2つのサブタイプが存在し、それぞれω1、ω2受容体と呼ばれる。ω1、ω2受容体の脳内分布は異なり、ω1受容体が小脳、嗅球、淡蒼球、大脳皮質第4層等に多いのに対して、ω2受容体は筋緊張に関与する脊髄や記憶に関与する海馬に多く、したがって関与する生理的機能も異なるとされている。
BZD系睡眠薬は一般にω1、ω2受容体に対する選択性が低いため、催眠鎮静作用、抗痙攣作用、抗不安作用及び筋弛緩作用の間の分離が悪いと考えられ、ω1ないしω2受容体に選択的な親和性を有する化合物は、これら作用の間の分離ができる可能性が考えられ、ω受容体サブタイプに選択的に作用する薬剤の開発が待たれていた。
フランスのSynthelabo社(現Sanofi)では、ω受容体のサブタイプに選択的に作用する薬剤を開発するために、BZD構造とは異なるイミダゾピリジンをプロトタイプとして1979年より研究を開始し、1980年ゾルピデムを発見した。
ゾルピデムはω1に特異性が高く、動物実験で選択的な催眠鎮静作用を示すことから、催眠鎮静剤として、BZD系睡眠薬の欠点が改良される可能性が示唆され、1982年より臨床試験が開始された。
その結果、BZD系睡眠薬とは異なる特徴及び有用性が確認され、フランスでは1987年6月に承認された。
我が国では、1987年5月より開発が始められ、不眠症(統合失調症及び躁うつ病に伴う不眠症は除く)に対する有用性が認められ、2000年9月承認を取得した。
その後、平成19年8月6日付薬食審査発第0806001号「我が国における一般的名称の変更について(その1)」に基づき、一般的名称を酒石酸ゾルピデムから、「ゾルピデム酒石酸塩」に変更した。
2011年4月に、ゾルピデム酒石酸塩錠として第16改正日本薬局方(2011)より収載された。2015年6月現在、フランス、米国、イギリスをはじめ100ヵ国以上で承認されている。
特徴と有用性
- ゾルピデムは非ベンゾジアゼピン構造を有し、ω1受容体に選択的に作用する。
- 速効性の超短時間型睡眠薬である。
- 選択的な催眠鎮静作用を有し、しかも生理的睡眠パターンに近い睡眠をもたらす。
- 入眠障害、熟眠障害のみならず、作用持続時間が短いにもかかわらず途中覚醒、早朝覚醒にも効果を示し、翌朝までの持ち越し効果が少ない。また、反復投与しても耐薬性、依存性が形成されにくく、増量なしで長期間安定した作用を示す。
- 承認時までの臨床試験では、1,102例(統合失調症及び躁うつ病に伴う不眠症を含む)中、副作用(臨床検査値の異常変動を除く)は190例(17.2%)に報告され、
主な副作用は、
ふらつき44例(4.0%)
眠気38例 (3.4%)
頭痛31例(2.8%)
倦怠感31例(2.8%)
残眠感29例(2.6%)
悪心23例(2.1%) 等であった。
臨床検査値の異常変動は、
ALT(GPT)上昇1.5%(12/778)
γ-GTP上昇1.1%(8/702)
AST(GOT)上昇1.0%(8/777)
LDH上昇1.0%(7/700) 等であった。 - 市販後の調査等では、4,485例中、副作用(臨床検査値の異常変動を含む)は、230例(5.1%)に報告され、
主な副作用は、
眠気21例(0.5%)
ふらつき18例(0.4%)
肝機能障害18例(0.4%)
ALT(GPT)上昇17例(0.4%)
γ-GTP上昇16例(0.4%)
AST(GOT)上昇12例(0.3%)
一過性前向性健忘10例(0.2%)
LDH上昇9例(0.2%) 等であった。
(再審査結果通知:2016年3月)重大な副作用として、
依存性、離脱症状、精神症状、意識障害、一過性前向性健忘、もうろう状態、呼吸抑制、肝機能障害、黄疸があらわれることがある。